ICU2日目~左心低形成症候群の治療のおさらい(グレン手術まで)~
今回長くてすんません
2016/08/27
面会に行ったとき、はる君は目は開いていないものの、身体をしきりに動かしていた。びっくり。
昨日、徐々に覚醒させるというような事を言っていたからね。
今日は心臓にペースメーカーが入っていた。
確実に昨日よりは元気になっている。
面会直前に体を拭いてもらっていて髪の毛ふさふさ
手術直後の写真を掲載するのは少し迷ったが、同じような複雑心奇形やHLHSの親御さんは術後の経過を知りたいんじゃないかと思うから掲載する。
左心低形成症候群の手術について
以下の記事はわたしがWEB・書籍・医師からの情報に基づいてまとめた内容になりますが、なにぶん素人の理解ですので実際と異なる内容になっている恐れもあります。誤り等ございましたらご指摘ください。また、治療方針については主治医に必ずよくご相談ください。
左心低形成症候群
左心低形成症候群(HLHS)は、左房・左室の低形成および僧帽弁と大動脈弁の狭小ないし閉鎖、上行大動脈の低形成など体循環を構成している左心系の構造物の一連の低形成を有する疾患である。
wikipedia:左心低形成症候群
はる君の場合は、左心室は極度の低形成でスリット状になっていた。BJ先生(仮名)曰く、「典型的なHLHSだね」との事。症候群というだけあり、いろいろバリエーションがあるようだが、いずれの場合も心奇形としては最重度である。
ノーウッド手術
動脈管なしで生存できるように大動脈を新しく作る手術。
- 動脈管の所で切る。
- ここの穴(卵円孔)を切開して広げる。これで単心房になる。
- 両肺へ行く肺動脈に人工血管の片方を縫い付ける
- 動脈管の部分は取り去る(残しとくと後々ボロボロになるので)
- 大動脈と肺動脈を縦に縫い合わせる
- 人工血管のもう片方の端を右室に縫い合わせる
順番は違うかもしれないけど、だいだいこういった内容。
両方向性グレン手術
最終的な根治術であるフォンタン手術の前に行う姑息術。上半身だけフォンタン手術にするイメージ。
- 大静脈を切って、右心房側を縫って完全に塞ぐ。
- 上大静脈を右の肺動脈に繋ぐ。これで上半身の血液は心臓を通さずに肺に流れるようになった。
- (場合によっては、ノーウッド手術の時に繋いだ人工血管(RV-PA)を縛ったり閉鎖したりする)
グレン手術の後、緊急再手術になった理由
結局この事を記事にしたかったんだけど、この説明をする為にはノーウッド手術とグレン手術の説明をしないとわかりにくいので長くなっちゃったね……。
今回、執刀医のBJ先生(仮)から、事前に前回繋いだ人工血管をどうするか、という話があった。
よりよいフォンタン型心臓にする為、肺動脈に適切に血液が流れてほしいが、人工血管を閉鎖してしまうと肺動脈への血流が不足してしまうかも知れない、との事。
前回のノーウッド手術は血液の流れ自体が大幅に変わるわけではないが、両方向性グレン手術は血液の流れの変化が極めて大きい。血液の流れは起きている時と寝ている時でも変わる。
このインフォームド・コンセントの時点で再手術になる可能性は説明されて納得していたので、わたし達夫婦も「あ、やっぱりそうなんだ」とあっさり認める事ができた。
むしろ周囲が「え?手術成功したって言ってたのに、また緊急手術だって!?」と大騒ぎしていた。
駆け付けたわたし達にもたらされたのはこういう説明。
「エコーで見ると、心臓から肺動脈への血流が強すぎて、上大静脈からの血流がちょっと押されてしまっている」
「グレン手術後、身体から肺へ行く血流はスムーズに流れるのが理想なので、この人工血管をどうにかしなくてはいけない」
「早いほうがいいので、今やりたいと思います」
「血流の量は、人工血管をつまむ強さを強めたり弱めたりしてちょうど良い所を探します」
「完全に閉鎖してしまうと、おそらく酸素飽和度が下がってしまうかと思いますが……」
(今回の手術は、はる君の酸素飽和度が下がった為に行うので、できれば手術後は24時間酸素吸入は不要な状態で終わりたい)
手術は1時間半で終了。
BJ先生(仮)に人工血管を閉鎖した事を告げられて驚く。
さらに衝撃的だったのが、低酸素状態が続いたはる君の身体が新しい血管を肺へ伸ばしていたという事。
肺に毛が生えている
この血管のおかげで、人工血管を閉鎖しても酸素飽和度が保てているらしい。
BJ先生(仮)は「この血管がある事は悪い事ではない」と言っていたけど、もう少し調べてみようと思う。側副血行路というみたい。