社会保障制度を使おう(障害者手帳編)
社会保障制度を使おう(障害者手帳編)
はる君は身体障害者手帳の三級を取得しています。
一番頻繁に受けている恩恵は、公共交通機関(バス・鉄道・高速道路)の料金割引ですが、他にも所得税の控除や自動車税の軽減等もあります。
7月に発行されているので今更ではありますが、手帳取得までの流れや実体験を書きました(はる君が取得した心臓機能障害の事以外は不明です)。
身もふたもない事を言うと、こういった福祉関係の申請はネットであれこれ調べるより、役所に電話すると一発ですむので、直接申請する前に「うちの子は手帳取れるのかな?」「どんなメリットがあるの?」「取ろうかどうか迷ってる……」という方に向けて書いてます。
対象となる心臓病とは?
身体障害者手帳は病名ではなく、一定の認定基準に合致している事が交付の条件となります。
この項目は身体障害者障害程度の開設(身体障害認定基準)についてより抜粋し、分かりやすくする為項目の記述順を一部変更しています(内容に変更はありません)。
心臓機能障害の級と認定基準
級について
1級 | 心臓の機能の障害により自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの |
2級 | ― |
3級 | 心臓の機能の障害により家庭内での日常生活活動が著しく制限されるもの |
4級 | 心臓の機能の障害により社会での日常生活活動が著しく制限されるもの |
心臓機能障害に2級はありません。なお、他にも障害がある場合には、その障害についての診断書を同時に出すことで、更に上位の等級を取得可能です。
認定基準(18歳未満)
<1級>
(ア)原則として、重い心不全、低酸素血症、アダムスストークス発作又は狭心症発作で継続的医療を要するもので、次の所見(a~n)の項目のうち6項目以上が認められるもの。
(イ)ペースメーカを植え込んだもの、又は人工弁移植、弁置換を行ったもの
(ウ)除細動器を植え込んだもの
(エ)心臓移植後、抗免疫療法を必要とする期間中であるもの
<3級>
原則として、継続的医療を要し、次の所見(a~n)の項目のうち5項目以上が認められるもの、又は、心エコー図、冠動脈造影で冠動脈の狭窄又は閉塞があるものをいう。
<4級>
原則として症状に応じて医療を要するか少なくとも、1~3カ月毎の間隔の観察を要し、次の所見(a~n)の項目のうち4項目以上が認められるもの又は心エコー図、冠動脈造影で冠動脈瘤若しくは拡張があるものをいう。
(所見a〜n)
a 著しい発育障害
b 心音・心雑音の異常
c 多呼吸又は呼吸困難
d 運動制限
e チアノーゼ
f 肝腫大
g 浮腫
h 胸部X線で心胸比0.56以上
i 胸部X線で肺血流量増又は減がある
j 胸部X線で肺静脈うっ血増がある
k 心電図で心室負荷像がある
l 心電図で心房負荷像がある
m 心電図で病的不整脈がある
n 心電図で心筋障害像があるもの。
何個該当するかはあくまで目安で、診断書を書いてくれる医師が総合的に判定します。
ただし、1級に記載の項目(イ)(ウ)(エ)に該当すれば1級と認定されます。
(この基準は18歳未満のものであり、18歳以降は別途定められた基準に従う必要があります)
はる君の診断書
臨床所見のア〜キ欄がa〜gに対応しており、ここで5つ該当しています。検査所見の欄も心肥大・心室負荷があったりと異常を示しています。
内部障害の場合、恒久的に使えるわけではなく、再認定の時期が定められている事が多くあります。その場合は再認定時期の到来前に再度診断書を提出する必要があります。はる君も来年再認定が必要です。
具体的な手順
- 自治体窓口で申請用紙を入手する
- 医師(指定医)に診断書を書いてもらう
- 自治体福祉事務所に申請書類一式(診断書、申込書、手帳に貼付する写真)を提出する
- 審査後、作成された手帳を福祉事務所に取りに行く
申請先
- 自治体(市区町村)の障害福祉担当窓口、福祉事務所等
身体障害者手帳は都道府県知事、指定都市市長又は中核市市長が交付します。
CALMIN在住の自治体は比較的福祉に恵まれており、申請から3週間弱で手帳が届きました(たぶん早い方)。
指定医
障害者手帳の診断書・意見書が書けるのは身体障害者福祉法第15条の規定に基づく指定を受けた医師のみです。はる君の場合はたまたま主治医のシマノ先生(仮名)が指定医だったので、退院の見通しが立った時点で回診に来て下さったついでに「手帳欲しいから診断書ください!」と直談判しましたが、普通そんなことしなくていいです。
小児心臓外科のある程の大きな病院ならケースワーカーがいると思うので、まずはケースワーカーに相談しましょう。診断書を書いてもらう際には所定の料金がかかります。およそ3000円〜6000円程度の事が多いようです。
入院中は申請が出来ません。退院してからも障害が残る時に申請が可能です。念のため。
写真
縦4cm、横3cmの写真を用意しました。証明写真でなくても無帽で正面の真顔であれば構わないので、自宅でデジカメ等で写真を撮り、写真用紙にプリントアウトして使用すればOKです。
どんなメリットがあるか?
国が定めた制度の他に、各自治体が定めた助成制度や減免制度があります。わたしは最初に申請するための書類を取りに行った際に、“障害者福祉のしおり”として冊子にまとまったものを渡されました。
一例を挙げると、
- JR、私鉄の運賃割引(第一種身体障碍者の場合は本人+同伴者一名が利用可、第二種身体障碍者の場合は本人のみ利用可。割引率はともに5割)
- 所得税・住民税の控除
- 自動車税・自動車取得税の減免
- 有料道路通行料金の割引(要事前登録)
- 公共住宅の優先入居
…等
美術館などの施設でも割引がある場合があります。ディズニーランドでゲストアシスタンスカードが利用できるのも有名かもしれませんね(ただ、流石にそこまでの人混みに連れ出すのは怖いので今の所使おうという気にはならないです)。
他に心臓病の子どもが利用できる社会保障制度はあるか?
- 小児慢性特定疾患の医療費助成
- 特別児童扶養手当
- 育成医療(自立支援)
…等
これらについてもノーウッド手術の退院後、一気に一通り申請済みですので、おいおい記事にしたいところです。
なぜ障害者手帳を取ったの?
障害者手帳を取ろうとする時に、申請そのものを迷ってしまう方も多いでしょう。障害がある事が知られると差別に結びつくかもしれないから、もしくは障害があると認めてしまう事になるからではないでしょうか。自分の事ならまだしも自分の子どもの事となると、なおさら慎重に考えたいというのももっともです。
わたしの場合は、割と早い時点で障害者手帳を取りました。生後2回目の手術の後、生後3ヶ月にも満たない時期です。
なぜか?
障害者手帳は社会保障制度であり、はる君は福祉を受ける権利があるのに、親が躊躇する事で本来受けられる権利を逃してしまうと考えたから、というのが一つ。もう一つの理由は、はる君の心臓は手術が成功する事で機能が改善されていく為に、後で手帳を取ろうとしても基準を満たさなくなる可能性があるからです(それはそれですごく良い事!)。
浮いたお金でより良い教育や医療を受けさせる事ができます。今の所、特にデメリットは感じません。お子さんの為に、使える福祉は全部使って欲しいと思うのです。
はる君のように複数回の手術が必要な複雑心奇形の場合は、姑息手術を行った後でもチアノーゼが残ったり、在宅酸素療法が必要だったりと、日常生活での障害があると認定される可能性が高いので、一度主治医に相談する事をおすすめします。
(つまり、根治手術後は残存する障害の度合いに応じて返上になる可能性が大です)
さいごに
- 障害者手帳の制度を利用する事は障害のある人が受けられる権利です。使いましょう。
- 黙っているだけで受けられる権利じゃないので、自ら動きましょう。まずは役所に問い合わせを。
この記事は2016年12月に書きました。時代により内容も変わっていきますので、最新の情報については必ずお住まいの自治体にお問い合わせください。
現時点で内容に誤り等があればコメント等でお知らせいただけると大変助かります。
この記事はホーム|厚生労働省の身体障害者手帳 |厚生労働省のページの情報をもとにして書かれています。