夜明けの心臓

最重度の心臓病の一つである左心低形成症候群の息子の記録。手術・入院・通院の事や病気の情報など。あと雑記。

フォンタン手術後・ICU2日目【開窓部が閉鎖する】

 これまでは前日の出来事を次の日にブログにUPしていたのだが、最近は滞っている。日々はる君の状態が大きく変化するので、わたし自身の心情もあがったりさがったり、なかなか筆が進まない。今後はなるべく当日中に更新できるように文章のボリュームを抑えることにする(最近は力み過ぎて文字もりもり、肩が凝るブログになっていたので)。

2017/12/15

 おはよう、はる君!と声をかけるけど今日も眠っていた。ほんの少し前まで声を上げて笑って、楽しそうに身体を揺らしていたのになあ、と思う。
気がかりだったSpO2(酸素飽和度、血液中の酸素の値。標準値は100%)は今日は83%くらいに回復していた。よかった。
昨日は主治医の先生が来るまで少し時間がかかったが、今日はICUにつくとすぐに主治医のシマノ先生(仮名)がやってきた。

穴が塞がる

 何度も書いたとおり、はる君は肺動脈の太さが不十分だから通常のフォンタン手術はハイリスクとなる。今回は心房と人工血管の間に穴をあける開窓(かいそう)フォンタン手術になった。

 下半身からの血管を18mmの人工血管で延長して、心臓を通さずに肺への血管につないでいる。その人工血管と心房(心臓に戻った血を溜める部屋)の間に直径4mmの穴を開ける。この穴があることによって、体→肺への圧力が上がり過ぎると穴から心臓に圧を逃すことができる。ただし、心臓内の動脈血(肺で酸素化された血液)の中に静脈血(体で酸素が消費された血液)が混じり、全身の酸素飽和度は下がる。

 シマノ先生は「どうやら、穴が塞がったらしい」と衝撃的なことを言った。たしかに手術の前には開窓部が自然閉鎖することはあり得ると言っていたけど……まさか、それが手術から2日目で起こるとは。人工物が体に入ると、自分の組織がくっつきやすい。そのため、血栓ができないように血液をサラサラにする薬を使う。数ヶ月をかけて体に入った人工血管は自分の組織で覆われることになる。

 穴が塞がった可能性はエコーで指摘された(穴のところの血流の漏れが見られない)。となると問題になるのは、穴が塞がっているのに酸素飽和度が83%程度でおさまっていることだ。現在の酸素飽和度は、100%の酸素を流しつつ、肺を拡げる効果のあるNOガスを入れてなんとか維持している数値だ。酸素吸入もNOガスもやめた場合、酸素飽和度は70%まで落ち込むことが予想される。……それ、フォンタン手術をする前の数値と変わらないですね???

 ああ、シマノ先生が緊張したような面持ちだったのはこれか。

今後の見通しについて

 開窓部が塞がったことは驚いたが、問題はそこではなく穴が塞がっているのに酸素飽和度が上がらないことだ。
 このまま現状維持するというのはジリ貧になっていくだけだとシマノ先生は言った。人工呼吸器を抜かないとICUから出られないし、人工呼吸が肺を押してしまうので長期間つかい続けることはできない。時間経過とともに次第に悪化する可能性のほうが高い。ただ現在、酸素飽和度が低い原因は判明していないという。

  • 心臓の動きは良い
  • 肺動静脈瘻のため、酸素化が上手くできていないかもしれない
  • 肺動脈のところの狭窄がうまく解除できていないかもしれない
  • 人工呼吸から離脱するために、NOガスを徐々に減らし、エポプロステノール*1、という薬剤の点滴にし、酸素濃度を下げていく

 根本的に解決するために外科手術を含むプラスアルファの治療が必要になる可能性は高い。

  • 土曜日あたりにCTをとって、血管を詳しく調べる
  • 仮にフォンタン循環が成立していない場合は、グレン循環に戻す

 え!グレン循環に戻す!?
それは嫌だけど、でもフォンタンが成り立たないなら仕方ないね。全身の血液を一手に肺に受けているけど、受け止めきれてないかもしれないってことだ。グレンに戻す場合、シャント(血液の横道、バイパス)を追加して肺動脈が成長するのをうながし、いつかまたフォンタン手術ができる日を待つことになる。聞けなかったけど、グレンに戻した場合には多分予後にも影響してくるんだろう。
いつまでもこの状態で待つことはできない。数日中には治療方針が決まるだろう。はる君、苦しいことばかりさせてごめんね。なんとか原因がわかってくれればいいんだけど……。

 それとは別件で、この日はとても悲しいことがあった。つらい。

*1:帰宅後調べたら肺高血圧症を治療する薬だった