夜明けの心臓

最重度の心臓病の一つである左心低形成症候群の息子の記録。手術・入院・通院の事や病気の情報など。あと雑記。

心臓移植について知っていること


イスタンブール宣言と日本の移植医療の問題点(海外渡航での心臓移植)について書かれた記事。
移植医療推進のため、ドナーカードで自らの意思を表明しようという呼びかけもあり、これはわたしも全く同感。
保険証の裏に意思表示欄があるから、まだ書いてなければ賛成でも反対でもいますぐ書いて!

ただしデポジットの説明があやしいので、わたしが知っていることだけを書く。

デポジットについて

デポジットとは deposit 、つまり保証金、前払金のことである。
実費のほかにデポジット代がかかるということではなく、あらかじめ支払うデポジットから実費を差し引いていく。

困ったのはアメリカです。じゃんじゃん海外の人が来てドナーを奪っていくのです。関係者は激怒しました。そこで日本人を含めて海外の人が簡単に移植に来ることができないように、4億円ものデポジットを取ることにしたのです。

だから、この説明はよく分からない。
海外からの渡航者は(米国内の人は支払う必要のない)高額なデポジット代を支払う、とも読めてしまう。
デポジットは割り込み代金ではない。

心臓移植にかかる平均的な金額

実際にアメリカでの心臓移植にかかる費用はどれくらいだろうか。


2017のフォーチュンの記事。
Millimanというコンサルタント会社が調べた臓器移植の平均的価格が掲載されている。
これによると心臓移植の平均的金額は140万ドルほどだという。
1ドル107円として、日本円にして約1.5億円。
これは平均的な金額ということなので、当然これを上回ることも下回ることもある。

これは米国人も同じ金額を支払う。
日本人だけ特別にデポジットという謎の高額料金を支払うわけではない。

米国人もこれ程高額な資金を用意できるのはわずかひと握りのため、一般的には保険でカバーする。

米国にドナーが多い理由として

宗教観の違いのほか、高額な医療費のために日本では即CTを撮るような頭部打撲であっても病院を受診せず、後日容態が急変し脳死になるというケースがあると聞いた(※ソース伝聞)。
しかし、オバマケアによって一般にも医療保険が広まり、逆に臓器移植待機者は増えたとも聞く。

海外渡航にかかる費用

拡張型心筋症の患者数はH28年度で27,968人*1いる。
海外渡航で移植を目指すのは進行が早く、予備力の無い小児となる(世界の移植待機ルールとして18歳未満が優先される、というのもある)。

補助人工心臓を24時間回しながらの渡航となるため、飛行機のチャーターに加え、帯同する医師と看護師などの人件費もかかる。
補助人工心臓がついていると集中治療室に入らなくてはいけないため、さらに高額な経費(1泊100万円程度)が発生する。

その他、通訳・移植コーディネーター等の人件費、付き添う家族の生活費が必要になる。
このあたりは「救う会」の会計報告などに記載されている。

わたしの考え

以上を踏まえると、4億円は法外な金額ではないように感じた。
高額なのはアメリカの医療制度がそう設定しているから。

ここまで書いたが、わたし自身は今回のzozo前澤社長の行動にはすこし居心地の悪さを感じる。
実は前澤社長の支援したお子様は、心臓病の息子・はる君と面識がある。
にも関わらずなにかモヤモヤとしたものを拭いきれないのは、資本家の一存で支援が決まったからかもしれない。
わたし達が支援に足る存在かどうか、ジャッジされているみたいに思えてならない。


元記事の内容に異論はない(デポジットの説明以外)が、【移植医療はお先真っ暗】などと煽りを入れず、事実のみ書いてほしかった。
お医者様ということなので、なおさら。

日本での待機人数

最後に、日本の状況も書いておく。
最新の情報(2019/06/30)で、心臓移植待機者の人数は759人*2、平均待機日数は1079.4日(約2年11ヶ月)*3である。