心臓病を対象にした胎児治療が始まる
心臓病を対象にした胎児治療が始まる
重い心臓病の胎児を対象にした胎児治療の臨床研究が日本でも行われることになった。
海外では行われているのを聞いたことはあったけど、ついに来たか、という感じ。
ソースはこちらのNHKの記事。
素人の理解の範囲で説明してみる。
(間違ってるかもしれないので、違っていたら遠慮なく教えてください)
対象となる病気
対象となる病気は心臓から出る大動脈の入り口が狭くなる「重症大動脈弁狭窄症」で、心臓の一部が発達せず、生まれてまもない時期から大きな手術を繰り返すケースがあります。
対象となるのは「重症大動脈弁狭窄症」だという。
大動脈弁と僧帽弁が狭窄した状態で胎児が成長すると、左心系が育たないので生まれてからは左心低形成症候群と診断されるだろう。
大動脈弁狭窄の治療ということは、左心低形成症候群の治療とも読み替えられる。
胎児循環の話
まず、血液が流れにくいところは育ちにくいというのを念頭においてほしい。
実は胎児がお腹にいるときは、生まれた後とは違う循環で成り立っている。
胎児は肺から酸素を取り入れているのではなく、へその緒を通じて酸素を受け取っているからだ。
心臓の形も胎児と生まれてからでは違う。
↑胎児の心臓
動脈管と卵円孔という横道があるところが普通の心臓と違う。
動脈管と卵円孔は、生まれた後に肺で呼吸を始めると閉じてしまう。
↑重症大動脈弁狭窄症だと、心臓はこんな感じ。
大動脈への入り口である大動脈弁が狭いので、大動脈が細くなる。
出生後、動脈管と卵円孔が閉鎖すると循環がストップしてしまい生きられないので、重症大動脈弁狭窄症の子は生まれると必ず手術が必要だ。
治療の内容
計画されている胎児治療は、針のような特殊な管を母親のおなかの外から胎児の心臓まで刺し込んで、管の先端からバルーンと呼ばれる器具を出して狭くなっている部分に設置し、血管を広げます。
血管を広げた後は、バルーンを閉じてすぐに回収するということで、生まれた後の手術の回数が減り、日常生活への影響を少なくすることが期待できるということです。
胎児治療で大動脈を広げることができれば、ノーウッド手術のリスクを減らしたり、1心房1心室のフォンタン手術ではなく2心室修復が目指せたりするのかもしれない。記事ではそこまで詳しく書かれてはいない。
(ノーウッド手術は細い大動脈を肺動脈と縫い合わせ、太い大動脈に作り替える最高難易度の手術)
感想
この元記事のタイトル「妊婦の腹から胎児の心臓に管刺し病気治療 臨床研究へ」も十分きついけど、サムネイルも記事に添付されている動画も衝撃だ。
今のわたしならこの治療を受けるかもしれないけど、胎児が心臓病だとわかったばかりの患者家族には相当なショックを与えそう。
何度も繰り返し訴えているけど、妊娠中に胎児に重い心疾患があると判明したときのサポートはまだまだ不十分に感じる。
新型出生前診断は希望により行われるのに対して、妊婦健診のエコーでは否応なしに告知が行われ、その事に対してのフォローも少ない。
(どういったフォローがあるのか、そもそも知らない。存在するのかも分からない)
この治療を受けるということは、それまで順調な妊婦生活を送ってきた妊婦さんにつらい告知をするということだ。
どうか丁寧に説明をして欲しいと思う。
そして、求めに応じてさまざまな制度や患者会など、心の支えになる事についても情報を与えてあげてほしい。
この臨床研究がうまくいって、はる君のような重い心臓病の子どもが、ひとりでも多く救われますように。